1976年、滋賀県生まれ。小学校ではバレーボール、中学・高校ではバスケットボールに夢中で体育会系。子どもの頃は、その時々に注目されていた宇宙飛行士やパイロットなどに憧れていた。高校生で進路を意識するようになると、モノを創る技術者や新しいモノを発見する研究者になりたいと考えるようになった。“ものづくり”を学ぶなら工学部。大学受験では最初は苦手だった物理の勉強に時間を費やした。解るようになると勉強が面白くなり、大阪大学工学部へ進学。2002年3月に博士前期課程を修了し、同年4月から(株)村田製作所で技術者として商品開発に携わるが、新しいモノを一から創ることができる大学という自由な環境に魅力を感じ、翌年5月に21世紀COEプログラムの特任助手として大阪大学に戻った。その後、博士号取得に向けた研究に取り組み、2006年7月に大阪大学から博士(工学)の学位を授与された。日本学術振興会の特別研究員(PD)に採用され、(独)産業技術総合研究所での研究を経て、2010年4月に大阪府立大学テニュア・トラック講師に採用。大阪府立大学は2008年度から若手でも独立した研究室を主宰できるテニュア・トラック講師を公募した。子育て中の女性研究者に対する手厚い支援を掲げる制度でもあった。小菅さんは講師の任期を務めた後、テニュア審査に合格し2016年に大阪府立大学理学系研究科物理科学専攻准教授となった。2024年4月から現職の大阪公立大学理学研究科物理学専攻教授を務めている。
【大阪府立大学は2022年度に大阪市立大学と統合され、大阪公立大学に名称変更した】
小菅さんは学生の頃から熱電材料とデバイスの開発に取り組んできた。熱電発電は熱を電気に直接変換する技術。近年では身の回りに小規模かつ希薄に分散している廃熱を回収する技術として注目されている。小菅さんはテルライド系熱電材料研究の業績により博士(工学)学位を取得している。その後、酸化物熱電材料とそのデバイス開発やナノ構造化による高性能化熱電材料の開発を行い、理学部へと所属変更後は熱電材料の構造や物性に着目した基礎研究にも着手し、2021年に室温付近で高性能な熱電材料の開発に成功している。熱電材料に求められる特性は電気伝導率が高い(電気を通しやすい)こと、熱伝導率が低い(熱は通しにくい)こと、ゼーベック係数(温度差により発生する電圧)が大きいこと。小菅さんは当財団の支援金で「不規則構造を導入した準安定相材料の構造安定化と高熱電性能研究」をテーマに、高熱電性能化のみならず構造安定化にも焦点を当てた熱電材料開発を行う。従来の設計指針に基づく熱電材料開発では、その性能が限界に達しつつあるため、新たな飛躍の契機となることが期待されている。
小菅さんは2人の子どもを育てながら、テニュア・トラック講師採用時から自身の研究室を運営している。教授就任後は学科の運営業務なども加わり、研究者と母親業の両立がいかに大変かを痛感している。女性研究者が少ない専門分野のため、次世代の女性研究者の育成や環境整備にも尽力したいと考えている。