一盛 (いちもり) 和世 (かずよ) (72)

 1951年、東京都生まれ。生物が好きで玉川大学農学部へ入学。昆虫について学ぶ中で、血を吸う“蚊”に興味を持つ。卒論研究を行った東京大学医科学研究所での、衛生動物学の権威 佐々学(さっさ まなぶ)氏との出会いがリンパ系フィラリア症(以下 フィラリア症)研究の原点となる。一盛さんはフィラリア症対策のプロジェクトがサモアで始まると聞き、青年海外協力隊に参加。その後、英国ロンドン大学衛生熱帯医学校へ留学しマラリア研究で博士号を取得。アフリカや中南米で熱帯病対策に関する経験を重ね、1992年に世界保健機構(WHO)の専門官に就任した。昆虫が媒介するフィラリア症、マラリア、デング熱などの対策に携わり、太平洋地区のフィラリア症対策チームのリーダーを経て、本部ジュネーブの顧みられない熱帯病(NTD)部で世界フィラリア症制圧統括責任者を務めた。フィラリア症は世界72か国・地域でまん延が確認されていたが、17の国と地域で制圧が達成されている。その内8か国・地域は一盛さんが16年をかけて現場で対策に奔走した太平洋地区だ。2013年9月にWHOを定年退職。30年ぶりに帰国し、長崎大学熱帯医学研究所を拠点にフィラリア症に対する啓発を続けている。2022年、これまでの功績が高く評価され「第29回読売国際協力賞」を受賞した。