森本(もりもと) 喜久男(きくお)(66)

 1948年、京都府生まれ。森本さんは現在、カンボジアで自身が作った村に住み、伝統的な絹織物の復興に心血を注いでいる。京都で手書き友禅工房を主宰していた森本さんは1980年に初めてタイの博物館でカンボジアの絣(かすり)に出会い、その生命力に引き寄せられ1983年にタイへ渡り、ラオス難民キャンプの織物学校でボランティアを開始。その後、ユネスコが実施するカンボジア手織物プロジェクトのコンサルタントとして現地調査に携わった。森本さんは、20年におよぶ内戦により途絶えかけていた伝統的織物の絣を復興するため、1996年にカンボジアの現地NGOとして「クメール伝統織物研究所(IKTT)」を設立。まず、生き残った織り手を見つけ出して村へ呼び寄せ、若い世代へ優れた技術を伝承する活動を始めた。そして、小屋を建て、井戸を掘り、野菜や桑や綿花を栽培し、養蚕をして絹を紡ぎ、自然染色の素材となる木々を植えるなど、染め織りに必要なものが全て揃っている工芸村を作りあげた。担い手の多くは貧しい農村部の女性たちであるため、森本さんの活動はカンボジア女性の自立と生活支援にも一役買っている。アンコールワット遺跡にほど近いシェムリアップにあるIKTTには、400名の職人が織り成す高品質の絣を求めて世界各地から多くの観光客が訪れるまでになっている。