福武(ふくたけ) 總一郎(そういちろう)(66)

 1945年、岡山県生まれ。早稲田大学理工学部卒業。会社勤務を経て1973年に、父親が創業した福武書店(現 株式会社ベネッセホールディングス)に入社。東京本部で勤務していた1986年、父哲彦さんの急逝により岡山本社へ戻り、代表取締役社長に就任。2009年から取締役会長を務めている。
 地域に根差した経営を心掛け、1995年に社名をベネッセ(ラテン語の造語で「よく生きる」の意味)へ変更。この変更には福武さんの、個々人が自分の幸せを追求するのではなく、良いコミュニティをつくることが一人ひとりの幸せにつながるとの考えが反映されている。利益を社会へ還元することも企業の重要な役割と位置付け、会社として「ベネッセアートサイト直島」の活動に取り組み、その後私財を投じて直島福武美術財団(現 公益財団法人福武財団)を設立し、直島に2つの美術館を開館。2010年に瀬戸内の6島を会場として開催された、瀬戸内国際芸術祭では総合プロデューサーを務め、国内外から延べ94万人近くが来場する大盛況へと導いた。同芸術際は来年3月にも開催される予定で、前回好評だった事業の継続のほか、建築家の安藤忠雄さんの足跡を紹介する事業や岡山県出身の画家国吉康雄さんの回顧展が企画されている。岡山県と香川県を中心に、自然や歴史に美術で光をあてる活動を通じて観光客と島民の交流や島の活性化を実現させるなど、地域社会への貢献が評価され、2008年に芸術選奨文部科学大臣賞、2010年に観光庁長官表彰、2012年にはモンブラン国際文化賞などを受けている。さらには、東京大学創立130周年を記念した東京大学基金へ個人で16億5千万円を寄付し、安藤忠雄さんの設計により情報学環・福武ホールが建築され、多くの研究者や学生に利用されている。